相手に寄り添いながら自分らしく表現していく
成城中学校 2025
2025年に創立140年を迎える歴史ある男子校、成城中学校。表現力の
育成を目的とする「国語表現」の授業では、「対象者を意識した表現」が
できるようになるためのユニークな取り組みが行われています。
「相手を意識」した表現力を伸ばす
2021年度から3つの独自授業「国語表現」「英会話」「数学統計」をスタートさせた成城中学校(以下、成城)。「国語表現」では日本語を、「英会話」では英語を、「数学統計」では統計データを使いながら、「自分を表現する力」を培うことが大きなテーマになっています。
今回ご紹介する「国語表現」(中1〜中2)では、班での話しあいやプレゼンテーション、本のポップやガイドブック作りなど、様々な「表現」に挑戦します。「表現する力」という言葉から、うまい文章を書いたり、積極的に発信をしたりする様子を連想する方もいるかもしれません。しかし、国語科の吉光樹先生は「この授業で培う『表現力』とは、そういった『アウトプットの仕方』そのものとは少し異なります」と語ります。
「もちろん、アウトプットも大切な『表現力』です。しかし生徒の文章を添削するうちに、そもそも『表現』をするために必要な『準備』、つまり、対象者はだれで、なにが求められているのかを検討する習慣が身についていないのではないか、という印象を受けたんです。
国語表現では、様々な表現物の制作に取り組みながら、その『準備』にあたる『調査(なにが求められているのか考える)』→『列挙(多くのアイデアを出す)』→『整理(アイデアを分類する)』→『構成(なにをどの順番で説明するか考える)』の4つの行程を繰り返し経験することで、徹底的に『対象者を意識した表現』の方法を習得します」(吉光先生)
数ある「表現」のなかでも特徴的なのが、中2の1学期に取り組む「ガイドブック制作」です。吉光先生が学年の教員団から集めた「行きたい場所」のアンケートが班ごとに割り振られ、その教員を満足させるようなガイドブック作りに挑戦します。
アンケートには、「だれと行くのか」「旅の目的は」など、必要最低限の情報が書かれており、テーマは教員によって「家族旅行」や「来年の修学旅行先候補」、「数学科全員で行く研修旅行」と多岐にわたります。
生徒はまず、これらの情報をもとに、希望に沿うガイドブックを作るにはどんな「調査」が必要なのか、例えば家族旅行なら「何人家族なのか」「移動手段の希望はあるか」などの質問を考えて、その教員にインタビューを実施。そのうえでガイドブック制作へと進んでいきます。
単に名所や名物を調べて羅列するのではなく、最初に「対象者がなにを望んでいるのか」を細かにリサーチすることで、より精度の高い「表現」が可能になるのです。
生徒の好奇心を広げていく図書館
「調査」が終わると、インターネットや書籍を使って情報を収集、分類していく「列挙」「整理」、表現物の形に落とし込んでいく「構成」の作業へと移ります。
ここで大きな力を発揮するのが、広々とした閲覧スペースが特徴の図書館です。国語表現ではほとんどの授業が図書館で行われており、とくに図書の分類や本の探し方について学ぶ「図書館オリエンテーション」や、6分で5冊の本を回し読みして要点をつかむ「点検読書」などの取り組みには司書も参加します。
「生徒は自由に司書に質問したり、アドバイスをもらったりすることができる一方、司書は生徒のリアルな反応を直接受け取ることができます。本校には2名の司書がおり、いつも丁寧に生徒の発言や発表に耳を傾けてくれていますよ。
『列挙』『整理』のために用意された書籍をみると、授業中の生徒の反応、理解度をふまえて選書してくれているのがよくわかり、そういった本が彼らの好奇心や発想、視野を広げる手助けになっているのだと思います」(吉光先生)
2年間を通した「調査」「列挙」「整理」「構成」の経験、そして司書の温かいまなざしと手厚いサポートのもと、生徒たちは「対象者を意識」しながら、「自分らしい表現の仕方」を形作っています。
学外に「視点をずらす」中3での探究学習
2年間かけて培った「表現する力」が存分に発揮されるのが、与えられた課題を解決する「探究学習」(中3)です。班ごとに企業から課題をもらい、その内容に沿った商品開発・企画制作をして、最終的にプレゼンテーションを行います。
「国語表現と同様に『調査』『列挙』『整理』『構成』の手順で進めていきます。しかし、大きく異なるのは、その対象者です。これまではクラスの仲間や教員など身近な人々に向けた表現がメインでしたが、今度は企業という少し離れた存在に向けて表現をすることになります。
対象者が変われば表現方法も変える必要がありますから、生徒には『視点をずらす』工夫が必要だよ、と伝えています。自分の表現力が学外でどの程度通用するのか、体験を通して実感できるよい機会になっているのではないでしょうか」(吉光先生)
文化祭(9月)では、各班が3分間の中間発表を行う予定で、今年も生徒からどんな「表現」が飛び出すのか、いまから期待されます。
最後に吉光先生は、「『準備』ができるようになったら、あとは思う存分『自分らしく』色々な表現に挑戦してみてほしいです。本校を受験するみなさんにも、ぜひチャレンジ精神を持って入学してきてもらえたらと思っています」と話されました。
生徒が持つ「個性」を最大限に発揮できるよう、手厚い支援と学習環境を用意している成城中学校。「自分らしさ」を伸ばしていきたい生徒にはぴったりの学校です。
生徒の学びを支える図書館
学校生活のなかで自然と「本に触れる」機会が用意されている成城。生徒は図書館で様々な本に出会いながら学びの幅を広げています。
国語表現
図書館との密な連携のもと実施される「国語表現」の授業。最初に教員からその日の授業テーマ、学びの目的、作業手順について説明を受けたのち、班ごとに本を使いながらグループワークをしていきます。
点検読書
中1の国語表現で行う「点検読書」では、1冊6分という短い時間で5冊の本を回し読みします。最終的に班で選んだ1冊の要点や魅力をまとめて、ほかの人たちが「その本を買いたくなる」ような発表を行います。
展 示
季節や他教科での学習に合わせて展示が変わるのも、図書館の大きな魅力です。館内には大小の展示スペースが設けられているほか、生徒制作のポップも飾られ、思わず足を止めて本を手に取りたくなります。
本の福袋
お正月に置かれる「本の福袋」は毎年の恒例イベント。「ゾクゾクしたい」「『死』について考える」「推しがいるあなたへ」などテーマごとに2~4冊の本が入っています。どんな本が出てくるかは開けてからのお楽しみ。
※2024年「サクセス12」9・10月号掲載の記事広告を転載
School Information
- 所在地:
- 東京都新宿区原町3-87
- アクセス:
- 都営大江戸線「牛込柳町駅」徒歩1分
- TEL:
- 03-3341-6141